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究極の味ではなく、毎日食べたくなるソーセージ 稲垣腸詰店 オーナー 稲垣雄三インタビュー

稲垣腸詰店

ヨーロッパで出会った、 日常に根付いた食文化に。

愛知県岡崎市にある「稲垣腸詰店」を知ったきっかけは、『N Drive』第4号の「富士山ぐるり」で取材した、静岡市にある「鳥仙珈琲」のご夫婦の紹介だった。
(参照:http://www.n-drive.jp/book/pdf/004gururi/62-63.pdf

「稲垣腸詰店」という、いかにも真面目一筋という印象の店名にも心を惹かれ、期待に胸を躍らせながら取材にお邪魔すると、のどかな住宅地の一角にひと際目を引く、真っ黒い壁に大きなガラス張りの店が建っていた。

「もともとソーセージが大好きで、自分で手作りしていたんです。その時に、飛騨の山間にあるソーセージの名店の味に出会い、衝撃を受けました。自分でも、こんなソーセージを作れるようになりたいと一念発起し、情熱を手紙に綴り、頼み込み、通い詰めた末に働かせてもらえることに。家族を残して、飛騨で3年間の単身赴任生活を送りました」と話すのは、オーナーの稲垣雄三さん。

飛騨での修業期間を経て、本場の食文化に触れたいと単身で渡仏。そこで出会ったのは、子供も年配の人も毎日食べられる、日常の中に根付いたハムやソーセージの味だった。日本に帰国し、自分の店の構想を練る中で稲垣さんが辿り着いた一つの答え。それは、当時まだ幼かった愛息子に、胸を張って安心して食べさせ続けられる製品を作るという信念だった。

稲垣腸詰店

素材を厳選し手間をかけ、 シンプルな味に仕上げる。

まずは素材の厳選。いくつもの豚肉を試した結果、養豚からていねいな処理までを自社で行なう、信頼の置ける豊田市の堀田畜産から一頭丸ごと仕入れることに。
ソーセージには、人工の腸を使うメーカーが増える中、仕上がりの食感や風味を追求した結果、天然の羊腸を使用。化学調味料は使わず、素材そのものの持ち味を引き出すために、塩やスパイスなどシンプルな味付けにしている。
燻製品は、香りが強く出やすい桜のチップではなく、ナラの木のチップを使って燻すなど、食べ飽きることのない味わいを心掛ける。

稲垣さんの思いをしっかりと詰め込むように、一つひとつていねいに、手作業で作り上げてられていくソーセージ。天然の羊の腸は、個々の強さ、厚さが異なるため、機械任せの速度や量では破れてしまう。機械の口に手を添え、指先の微妙な力加減で量を調整しながら、神経を集中して詰めていく。季節や気候に合わせて湿度や温度、時間を計算しながら、製品に合わせて燻製やボイルに。熟成が必要な製品は、工房の一角にある熟成庫でじっくり時間をかけて、焦らず寝かせる。
「一日にできる量は限られています。長期熟成を要するものは、完成まで1カ月くらいかかるものも。それでも、今のスタイルを変えるつもりはありません」。

究極のものを売る敷居の高い店ではなく、フランスで目にしたような「普段づかいの店」にしたいという稲垣さん。
「一番厳しいお客さんは、子供たちかな。おいしくないとか、食感が違うとか、すぐに気付きますからね。稲垣腸詰店のソーセージが、郷土食のようにこの地に根付き、誰にとっても親しみ深い味になれば嬉しい」。
店名に込めたのは「誰が見ても、何を作り、何を売っているかが伝わる店にしたい」という稲垣さんの思い。その実直さが、素朴でやさしい味わいから、じんわりと伝わってきた。

オーナーの稲垣雄三さん
店先には、素朴なハム、ソーセージをはじめ、白カビ熟成ソーセージやベーコン、パンチェッタなどワインに合わせたい長期熟成の商品も並ぶ。
「家庭で安心して食べられる、普段使いのものを」という思いから、地元の養豚場から仕入れた豚肉を用い、一つひとつの工程を手作業でていねいに仕上げる稲垣さん。

食感や燻製香などを大切にするため塩、コショウを中心としたシンプルな味付けで、ソーセージは天然の腸のみを使用。高山の人気店やフランスで修業を積んだ、オーナーの稲垣雄三さんが行きついた「普段使い」の品々は、毎日食べても飽きのこない、記憶に残る味わいだ。

稲垣腸詰店(http://inagakiya.com

岡崎市岡町恵源前58-1
TEL/0564-54-4342
営業時間/10:00〜19:00 休業日/月曜
アクセス/ 東名高速 岡崎ICより約10分

◎text by 花野静恵 ◎photo by 竹内秀実